新得の少し外れに共働学舎という農場がある。ここでは、60人が共に生活をしている。
共働学舎は、大きく分けて3箇所あり、信州/南沢共働学舎(長野県2つ、東京都1つ)、寧楽共働学舎(北海道小平町)、そして新得共働学舎がある。
共働学舎とは、心身に重い「妨げ」を抱えている方たちが、共に働く特定非営利活動法人(NPO法人)である。
新得農場の代表の宮嶋 望 氏はこう述べている。
人間は太古から、複雑に関わり合い相互に力を及ぼしながら社会を作り上げてきました。どんなに大きくて強いものも、つまるところたくさんの小さくて弱いものたちに支えられている存在です。忘れてならないのは、弱いものに対してたとえささやかでもつねに心を差し向けていること。その意味が聖書にはこうあります。
「いと小さき者のひとりのために為(な)したるは、すなわち我のために為したるなり。」我(神)とは、世界。小さなもののために何かを行うことは世界全体のためのふるまいにほかならない、という気づきです。(新得農場HPより)
放し飼いにされている羊たち
「弱いものには手を差し伸べる」というのは、普通はなかなかできないものだ。
人は生活をするためには生計を立てていかなければならないのに、人の生活の事を考えるのなんてよりいっそう難しい。
しかし、生きて行く上で、人と人とがぶつかり合って学び合い、そして成長して、時間はかかってしまってもそれが、人生においての[自分の財産または徳]となる。
確かに今の社会は、コミュニケーションを取るのが難しかったり、人それぞれ考え方が違うなどと複雑さを持っている。そこで挫折をしてしまう人もいる。また呆気無く人生が終わってしまうのではないかという気持ちを持つ人も少なくないだろう。
今までの人類の過程においても付いて回っていたものだ、そしてこれからも。
だからこそ、一人ひとりの個性を生かし、この大自然の中で農業を通じて生きることの素晴らしさを学ぶことが出来るところが共働学舎なのではないかと思う。
共働学舎でも場所によって様々である。
信州/南沢は、蕎麦。寧楽は、ソーセージ。新得は、チーズを主に製造して生計を立てている。
新得農園は、広大な土地、酪農地帯であることから、牛を育てるところから製品(チーズなど)までの1つのストーリー全て行っている。いわば自家製の乳製品だ。
売店の様子
*ココでしか作れないチーズ
もともと新得農場の場所は、町営の放牧農場であった。
1978年6月から共働学舎として自労自活の生活を営み始めたが、牛乳の出荷だけでは生活が厳しくなり、考えた。
当時、他の酪農家は手を出さなかったハード系のナチュラルチーズに目をつけた。
熟成に時間がかかり長い時間をかけてやるのであれば、自分たちの得意分野になるのではないかと考え、1984年にホルスタインの他に、チーズ製造に適しているブラウンスイスを飼ったのがチーズ製造の始まりである。
フランスでは無殺菌乳を利用した伝統的なチーズ文化がある。そこで、1990年にユベール氏(フランスAOCチーズ協会会長)が来日し、代表が本物のチーズの作り方を教わる。
「牛乳を運ぶな」という言葉、それが本当のチーズ作りに必要だった。
その場で絞ってその場でチーズを作ることによって、機械などでの品質の劣化を防ぎ、より本場のチーズに近づいた。
ここには、各種類のチーズの職人が一人ずついる。
職人は、温度調節や数値が記されているマニュアルなどは一切使わず、「微生物との会話のやりとり」でチーズを作っているという。それがココでしか作れないチーズの所以である。
熟成庫にも気を使っている。ヨーロッパでは石炭岩の洞窟や鉱山の廃坑でチーズの熟成をしている。所以はマイナスイオンが十分にあること、湿気が85~95%を維持できるベスト環境であるからである。新得農場は、地下に炭と自然の軟石(札幌軟石)を積んでベストな環境を作っている。
*製品
ここでは、チーズの他にチーズを作る過程において排出されるホエー(乳清)を使ったジャムが売っている。
ホエイジャム(大) 580円
味は、キャラメルのような甘みに少々酸味があるジャムである。
他にもホエイジャムを使ったソフトクリームも売っていた。
ホエイジャム入りソフトクリーム 300円
乳資源を全て余すことなく使用しようとする新得農場の精神は素晴らしいと思った。
是非、新得に立ち寄ったときは普通とは少し違う農場を味わってみるのもいいだろう。
農事組合法人 共働学舎新得農場 ミンタル
住所: 北海道上川郡新得町字新得9-1
TEL:0156-69-5600
ホームページ: http://www.kyodogakusha.org/
HAYASAKA TAKUMA // PEPESO